質の高い訪問看護サービスを提供するためにも、業務改善に取り組みたいと考えている事業者の方もいらっしゃるのではないかと思います。
そのような時に、「業務改善をするためにはどうすればいいの?」や「実際に効果のあった業務改善の取り組みはどんな事例があるの?」といった疑問を感じるかもしれません。
この記事では、訪問看護事業所の経営者・管理者の皆様に向けて、業務改善の方法や実際の事例、ツールなどについて解説していきます。
まずはじめに、業務効率化と業務改善の言葉の違いについて確認しましょう。
業務効率化とは、これまで行ってきた業務の「時間や費用をより削減する」ことを言います。一方、業務改善は、「業務時間に対しての成果の割合を向上させる」ことを言います。
訪問看護における業務効率化では、サービスの質を落として仕事を早く終わらせるのではなく、サービスの質をキープした上で早く終わらせる方法を考えることに留意しましょう。
訪問看護の業務を改善するために、具体的にどのような取り組みを行っていく必要があるのでしょうか。
厚生労働省の「介護サービス事業(医療系サービス分)における生産性向上に資するガイドライン 改訂版」では、業務改善の具体的な方法が3ステップに分けて紹介されています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
はじめに、訪問看護事業所の課題を洗い出し、仮説を設定した上で、業務改善のための方針を決めます。
何のために業務改善を行うのか、その目的や意義を明確にし、事業所内で共有します。
その際に、目的に沿った業務の見直しの範囲や、業務改善を推進する担当者も決めます。
事業所の課題がどこにあるのか洗い出すために、定性面・定量面から情報収集をし、現状を把握します。
定性面では、以下のように職員に聞き取り調査を行いましょう。
定量面では、シフト表などを活用し、それぞれの職員がどの業務にどのくらいの時間をかけているのかを見える化します。
現状が把握できたら、以下のような手順で課題を分析します。
1.ポストイットなどを活用して、事業所の抱える課題を洗い出す。
2.似たような課題をグループ化する。
3.課題と課題の因果関係を整理する。
優先的に改善すべき課題をいくつか設定し、仮説を立てた上で、業務改善の方針や目標を策定します。
この時に、業務改善をした場合のインパクトが大きいものを優先すると良いでしょう。
次に、策定した業務改善の方針を実現するために、事業所内で体制を整備し、実行に移します。
業務改善方針を遂行するための体制を明確化するために、各階層・職種で責任者を決めます。
体制整備をする中で、定期的なミーティングの開催など、訪問看護事業所が提供するサービスの「あるべき姿」を共有することも重要とされています。
業務改善の意識や方法を共有するために、以下のような研修・ワークショップを実施します。
実際に業務改善のための活動を実施します。一定期間実施する中で疑問や課題が発生したら、業務改善の責任者を中心としたチームに意見を集約しましょう。
業務改善のための活動を実施するだけで終わるのではなく、活動の評価を行うことも重要です。
具体的には、ステップ①で立てた目標の達成度合いや目標達成までのプロセスを確認します。その上で、さらなる改善に向けて、残された課題や新たな課題を発見し、新しい業務改善方針を立てることが大切です。
それでは、訪問看護の現場で実際に行われた業務改善の事例を、厚生労働省の「介護サービス事業(医療系サービス分)における生産性向上に資するガイドライン 改訂版」からご紹介します。
【業務改善の取り組み】
2つの事業所が共同で夜間専従看護師を配置することにより、日勤看護師の夜間コール負担の軽減を図るとともに、夜間専従という訪問看護師の働き方の多様化を試行する。
【業務改善の効果】
頻回な訪問が必要な利用者と日中訪問時に状態変化のリスクが高いと判断された利用者を、計画的に夜間訪問することで、月当たりのオンコール件数は、10件前後に減少した。 定期訪問により、夜間の電話対応のみで利用者が安心し、緊急訪問が不要になる利用者もおり、実際に訪問が必要となるケースが減少した。月当たりの緊急訪問件数は転倒時等の1~2件に減少した。 日中の夕方の急な訪問についても、夜間専従看護師に対応を任せられるため、日勤看護師の残業を回避でき、日勤看護師の疲労軽減につながった。
八千代市訪問看護師会では連絡にあたり、今までは相手先に応じて各種のビジネスチャットツールや、FAX、電話等を用いていたが、連絡方法が統一されていない不便さを感じており、安心して使えるコミュニケーションツールへの統一が検討された。その結果、コミュニケーションツールとしてビジネスチャットツールに統一する方針が決まり、具体的な利用方法を検討した。最初に利用ルールと使い方について検討し、テーマ別グループを作成した。
医療機関から利用者の受け入れ依頼があり自事業所が受け入れられない場合、今までは代わりに受け入れられる事業所を電話で探していたため、なかなか連絡が取れず、受け入れ先の決定に時間を要した。今回、「利用者受け入れグループ」への投稿により全事業所が見られるようになったため、今までよりも短時間(概ね数十分〜3時間程度、長い場合でも当日中)で受け入れ先が決められるようになった。これにより連絡を行う事業所の所長や事務員の連絡の負担軽減はもとより、紹介元の医療機関の職員やケアマネジャーの負担も軽減した。
最後に、訪問看護の業務改善のために有効なICTツールをまとめてご紹介します。
訪問看護の業務効率化には、請求・記録ソフトのカイポケ訪問看護がおすすめです。
カイポケ訪問看護は、パソコンだけでなくタブレットやスマートフォンからも利用することができるクラウド型のソフトウェアのため、事業所内だけでなく訪問先からでも、利用者様の情報の共有や記録の入力などを行うことができます。
また、タブレットで入力した記録が実績報告書に連動するため、転記する手間が省けて業務効率化につながります。
「業務改善のために請求・記録ソフトを導入したい」と考えている方は、ぜひこちらからお問い合わせください。
ここまで、訪問看護における業務改善の進め方や事例などについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
ご自身の事業所で効果のある業務改善を進めるためには、現状を把握して課題を洗い出し、優先順位をつけ、業務改善を職員と共に進めていくことが大切です。また、業務改善の取り組みは一度だけ実行すれば良いというわけではなく、活動を振り返って計画を練り直し、新しい改善の取り組みを実行していきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。